製造工場に求められるカーボンニュートラルを徹底解説

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CO2排出ゼロと似た意味の言葉にカーボンニュートラルがあります。いずれも地球環境を守るため、SDGs達成のために必要なことです。

この記事では製造工場に求められるカーボンニュートラルと、実際に製造工場で行われている取り組みを解説いたします。大企業の取り組みだけでなく、中小企業の取り組みも取り上げています。メーカーの施設担当や設備担当の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

工場に求められるカーボンニュートラルとは

そもそもカーボンニュートラルとは何でしょうか?

カーボンニュートラルとは人間が排出する温室効果ガスの量と、自然界が吸収する温室効果ガスの量が同等の状態をいいます。つまり温室効果ガスを排出してはいけないのではなく、自然界が吸収できる量まで排出量を下げればいいのです。

温室効果ガスとは次の気体のことをいいます。

  • 二酸化炭素(CO2
  • メタン(CH4
  • 一酸化二窒素(N2O)
  • フロン

温室効果ガスにおける各気体の構成比率はCO2が約76%と最も高くなっています。そのため、温室効果ガス削減とCO2削減はほぼ同義になるのです。

ただし、CO2の排出量削減だけがカーボンニュートラルへ向けた取り組みではありません。自家発電や、再生可能エネルギー由来の電力への切り替え、また他の企業が削減したCO2を買い取るカーボンオフセットがあります。

これらの活動を通して2050年までにトータルで温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするのが、カーボンニュートラルです。

カーボンニュートラルの取り組み事例

CO2の排出量削減を計画するとき、三つの区分があります。

Scope1:生産活動などで直接的に排出するCO2
Scope2:電力調達などで間接的に排出するCO2
Scope3:サプライチェーン(材料調達から納品先までの一連の流れ)におけるCO
2
※ただし、Scope1及びScope2は除く

CO2の排出量削減目標が科学的根拠にもとづいており、かつ認定されるとSBT認定事業者になります。ちなみにSBTとはScience Based Targetsの略であり、パリ協定に基づいた基準です。

ここで製造工場におけるカーボンニュートラルの取り組み事例を紹介いたします。大手企業一社と、中小企業二社を取り上げます。

事例1. 製鉄会社の取り組み
(カーボンリサイクル高炉の開発とエンジニアリング事業によるオフセット)

製鉄の最初の工程である高炉では、鉄鉱石をコークスで還元するため必ずCO2が発生します。しかし、カーボンリサイクル高炉では、水素を供給することにより発生するCO2と結合させて、メタン(CH4)を発生させます。メタンは鉄の生産(還元)に利用できるため、炭素を繰り返し使えるのです。

しかし、この方法には次のような技術課題があります。

  • 大量の酸素とメタンを高炉に吹き込む技術
  • メタン生成設備と高炉の連動操業技術
  • 高炉で活用しきれないCO2を有効活用する技術

課題は残りますが、CO2排出削減に貢献するエンジニアリング事業(再生可能エネルギー発電など)とオフセットさせることにより、2050年のカーボンニュートラル達成を目指しています。

表1. ある製鉄会社のカーボンニュートラル達成に向けた目標

CO2排出量(鉄鋼事業)と抑制量(エンジニアリング事業)(万t-CO2
2013年度実績 2024年度目標 2030年度目標 2050年度目標
鉄鋼事業 5,810 4,760 未定 カーボンニュートラル達成
エンジニアリング事業 1,200 2,500

事例2. 染色加工業者の取り組み
(ボイラーの熱源変更と省エネルギータイプの染色機の導入)

生地(布)の染色加工では60℃〜130℃の水の中で布を泳がせるため、温度を上昇・維持させるためにボイラーを使用します。また、染色後の洗浄に多量の水を必要とし、水の浄化にもエネルギーを使います。

中小企業版SBTを取得したある染色加工工場では、かつて使用していた重油ボイラーから木材チップを熱源とするボイラーに変更しました。計算すると、ボイラーだけで年間16,413t-CO2排出していたのが、4,046t-CO2まで削減されていたそうです。

近年は染色機メーカーと開発した省エネルギー効果の高い染色機を使用しているとのこと。染色に必要な水も削減できるため、使用後の洗浄に必要なエネルギーも削減できているそうです。

表2. ある染色加工業者のカーボンニュートラル達成に向けた目標

Scope 基準年 排出量
(t-CO2)
目標年 排出量
(t-CO2)
削減率
1 2018年 1,230 2030年 615 50%
2 2018年 2,506 2030年 1253 51%
1+2 2018年 3,736 2030年 1868 50%

事例3. 繊維メーカーの取り組み
(照明のLED化と再生可能エネルギーの活用)

衣料品や車両のシートに使われる繊維を作る撚糸(ねんし)事業を営む工場でも、カーボンニュートラルに向けた取り組みを行っています。

はじめに行ったのは蛍光灯のLED化。基本的なことですが、約15kWhの電力使用量の削減効果があったようです。

今後は調達する電力の再生可能エネルギーへの切り替えや、太陽光やバイオマスによる自家発電により、カーボンニュートラルを達成する計画を立てています。なお、2022年に中小企業版SBTを取得しています。

表3. ある繊維業者のカーボンニュートラル達成に向けた目標

Scope 基準年 排出量
(t-CO2)
目標年 排出量
(t-CO2)
削減率
1 2020年 698.41 2030年 497.47 28.77%
2 2020年 513.28 2030年 205.32 60%
1+2 2020年 1,211.7 2030年 702.79 42%

工場のカーボンニュートラルに貢献するトリーエンジニアリングのエアノズル

工場のカーボンニュートラルに貢献するトリーエンジニアリングのエアノズル

カーボンニュートラルを考えるときに意外な盲点がエア。エアの使用量を削減することで節電につながり、ひいてはCO2排出量削減につながるのです(Scope2)。

トリーエンジニアリングのエアノズル「Hayate」

エア消費量を削減するにはエアチューブ等からの漏れをなくしたり、高効率のエアシリンダを導入したりする方法がありますが、比較的簡単に取り組めて大きな効果を期待できるのがエアノズルの変更です。

トリーエンジニアリングでは「Hayate」というシリーズのエアノズルを製造・販売しています。Hayateはノズル先端での乱流を抑制する形状設計によりそもそもエア消費量が少ないうえに、ノズル先端部で発生する負圧により周囲の大気を巻き込む(大気二次エア)ため、エア消費量のわりに出力するエア流量が多くなるのです。

エアノズルのCO2削減効果

Hayate-Type-S05のエア消費量は150L/min、お客様のご使用頻度の高い3社の平均は797L/minです。また、Hayate-Type-S05年間CO2排出量は0.75t-CO2であるため、エア消費量の削減が電力使用量の削減につながり、流量差がそのままCO2排出量に比例するとお客様のご使用頻度の高い3社の平均は3.98t-CO2となります。この試算はノズル一つあたりですので、工場で使用しているノズルの数を考慮するとCO2削減効果が小さくないことが分かるでしょう。

トリーエンジニアリングではテスト用サンプルノズルの貸出は随時行っています。ぜひお気軽に株式会社トリーエンジニアリングまでご連絡ください。